No Baseball No Life 野球がなければ、人生じゃない vol.1

大阪で豆菓子製造販売一筋創業大正2年、冨士屋製菓本舗の3代目社長の北野登己郎です。 
いつも楽豆屋ブログをご覧頂きありがとうございます。
今回から、No Baseball No Life (野球がなければ、人生じゃない)と題して野球関わる様々なコラムをお送りしたいと思います。

野球を1試合開催するには、様々な人々が関わっています。 そこで、野球界を支える様々なプロフェッショナルをご紹介したいと思います。

たとえば、審判や公式記録員、グランドキーパーや、客席のビール売り子さん、ウグイス嬢さんなどです。

少年野球であろうが、プロ野球であろうが、野球を始めは、ボールとバット、グローブないと始まりません。 そこで、第1回目は、奈良県三宅町のグローブ職人さんを訪ねてきました。

第1回 グローブ職人 Crafter Mind 代表 酒井真矢さん

僕も知りませんでしたが、奈良県磯城郡(しきぐん)三宅町は、日本グローブ生産の一大産地だったようです。 先日、三宅町では、グローブ生産の生誕100周年のイベントが開催され、聴講に行ってきました。

最盛期は、三宅町全体で530万ケのグローブを1年間で生産し、積極的に海外にも出荷していたそうです。 時代の流れと共に、グローブ生産の拠点が海外に移って行く中で、三宅町のグローブ工場やグローブ職人さんも減少して行きました。そんな中で頑なにグローブ作りにこだわっている職人さん達がいます。

今回、その中の一人、Crafter Mind (クラフターマインド)の代表、酒井真矢(さかいまさや)さんの工房を訪ね、グローブ作りのこだわりと情熱を伺ってきました。

グローブ作り一筋25年、酒井真矢さんのこだわり

左に酒井さん、右に私、グローブの工房に行くと、野球少年にタイムスリップします。
北野

今日はお時間を頂き、ありがとうございます。 では早速、よろしくお願いします。

まず、こちらの会社のご紹介からお願いします。

酒井さん

会社名は、Crafter Mind (クラフターマインド)と言います。

北野

こちらは、酒井さんの会社で、そして、初代なんですか?

酒井さん

僕がここで始めて2年目なんですけど、グローブ職人としては、25年目で、18歳の時から、ここで働いてきています。 

働きはじめた当時は、親方はじめ親方の家族で7名ぐらいでされていました。 

それを2年前に引き継いで、独立して今は、やっています。 今は、一人で作っていますが、妻や弟、父なども手伝ってくれています。

北野

なぜ、このグローブづくりに携わるようになった、きっかけは何だったんですか?

酒井さん

元々、九州生まれだったんですが、こちらの香芝へ引っ越してきて、高校まで野球をやっていました。 甲子園を目指してましたけど、そこまで行かなかったので、それで、自分で作ったグローブが甲子園へ行ってほしいと思うようになり、この道に進む決心をしました。

 

その当時、グローブ職人の求人とかなかなか無かったんですが、奈良県のスポーツ品組合の理事長さんが、高校に営業に来られていたのを、思い出して、その人を頼って、グローブ工場の紹介をお願いしました。

 

4,5軒とか紹介してもらったけど、中々返事がなく、最後の1軒がここで、「高校卒業したら、いつから働ける?」と聞かれて、もう高3の卒業前から働き始めてました。 

北野

以来、ずっとこちらで働き続けてこられたんですか?

酒井さん

はい、そこからグローブ作り一筋に25年が経ちました。

北野

グローブ作りで、所謂、一人前になるには、どれくらいかかるんですか?

酒井さん

まだ、今も一人前とは思ってないんですが、一生かかるとおもってるんですが、だいたい、一通り、グローブを作る形になるには、3年ぐらいですかね?

北野

では、現在、グローブ作りは、1日に何個ぐらいできるもんですか?

グローブを作るための金型
酒井さん

うちでは、一日2個ぐらいですかね? 一人なんで、それが限界ですね。

北野

と言うことは、1ケ月だと50~60ケぐらいなんですか?

酒井さん

そうですね。 それぐらいですね

グローブ作りは、こんなにたいへん

北野

グローブ作りの工程は、どれぐらいあるんですか?

酒井さん

工程分けると、皮の裁断から始まって、皮のスライス、捕球面の刻印、手の中

のパーツ、表のパーツを縫って、パーツ合体させて、紐通しなど、仕上げまで10以上の工程になると思います。

 

北野

それは、工程ごとにまとめてやるのか? 1ケずつ完成させて作るんですか?

酒井さん

うちはメインがオーダー品なので、1ケ1ケ完成させて行きます。 たぶん、工程ごとにまとめて作れたら、もう少し量産はできると思うんですけど。

北野

そのオーダー品は、プロ野球選手用、学生用、子供用など色々なんですか?

酒井さん

うちは、色々なので、今だと1ケ月に5ケは、プロ野球選手用に作っています。

その他、国内だけでなく、海外からも注文があります。 台湾や韓国からの注文が多いですね。

北野

さすがに、子供用の注文はどうなんですか?

酒井さん

子供用もありますよ。 うちのグローブの作り方は、手型に合わせて作るんで、手の小さな選手や、野球をやり始めた方にこそ、オーダーのグローブを使ってほしいです。 でも親からしたら、高価なものなので、なかなか買いにくいですけど、初心者ほど、上達するのも早いので、できれば手に合ったグローブを持ってほしいのが、僕の持論なんです。

 

今は、子供用とか、女子用の注文が多くて、手のサイズに合わずに、スポーツ店の既製品では、手のサイズに合わないお客さんが、探されて注文頂くケースが多いです。

北野

では、どういう感じでオーダーがくるんですか?

酒井さん

今は、うちの注文のほとんどが、ユーチューブを観て、お客さんが注文されてきます。

北野

へ~、ユーチューブですか?

酒井さん

はい、ユーチューブで、グローブ職人しんちゃんと言うチャンネルを持ってまして、それを観て、直接、注文されてきます。 グローブ職人で、グローブ作りを発信している人は、誰もいなかったので、始めてみました。 

ユーチューブ始めて分かったんですけど、けっこう、手に合わないグローブに悩まれてる人が多くて、それでこういうのを作れますよと発信すると、問い合わせが来たりしますね。

 

北野

僕も少年代は、野球少年だったんですが、今って、グローブっていくらぐらいの値段するんですか?

酒井さん

スポーツ店のグローブはほとんどが海外製なんですが、たとえば、軟式用で、安くて8,000円から、高いものだと25,000円ぐらいですかね? 

うちだと、軟式の少年用で、20,000円から、そして、一般軟式用は、30,000円からですね。

一般のスポーツ店のオーダーだと、たぶん、30,000円ぐらいからですかね?

北野

海外製のグローブと比べて、どう違うんですか?

酒井さん

やっぱり、先ず皮の質が全然違いますね。 そして、フィット感ですかね。 

今日本製の軟式用グローブは、なかなかないので、材料の高騰もあって、今はほとんどが、人件費の安い海外製で、中国製、フィリピン製、ベトナム製ですね。

北野

プロ野球選手からの注文はどんな感じなんですか? 細かいリクエストとかあるんですか?

酒井さん

プロ野球選手のオーダーは、ほとんど「前回、同様」って感じなんですが、それが、実は一番むずかしいんです。 毎回、皮の質とかも天然なので、季節とかでも違ってくるので、同じにつくるのが一番難しいですね。

 

(と言うことで、こそっと、契約用具店を通じた某チームの某投手のオーダー書を内緒で、見せてくれました。)

北野

グローブ作りの工程の中で、一番難しいところは、どこですか?

酒井さん

全て難しいんですけど、特に裁断ですね。 皮は、縦にも横にも伸びるのですが、皮の質を見極めて、捕球面に合わせて裁断するのが、苦労しますね。
皮は、天然ものなので、どうしても傷とかがあるので、いかに傷が目立たないように作って行くかが、ポイントですね。

 

北野

では、一番の喜び、楽しみは何ですか?

酒井さん

それは、やっぱり出来上がったグローブを、お客さんに手渡して、初めて手にはめた瞬間に、まず「軽い」と言ってもらって、「めっちゃええ」と言って、気に入ってもらった瞬間ですね。
そして、また買い替える時にリピートの注文があった時もうれしいですね。

北野

今は、グローブはどれぐらいで、皆さん買い替えられるんですか?

酒井さん

最近は、グローブがダメになったから買い替えるより、例えば、小学生から中学生に上がるタイミングとか、軟式から硬式に変わるタイミングとか、今、使いすぎて皮がダメになるなんてことは、よほど練習でもしない限りは、ほとんどないですね。
あとは、内野から外野などのポジションが変わる時に買い替えるパターンですね。

北野

では、最後の質問なんですが、これからの目標とか夢を教えてください。

酒井さん

グローブ業界は、今まで余り横のつながりがなかったんですけど、100周年を機に、横のつながりなんかもできて来て、職人同士で情報交換をしています。

今、三宅町のグローブ作りは、海外からも注目されていて、たとえば、台湾からも「ここの皮を使ってほしい」なんていう注文なんかもくるんですが、なかなか皆さん、海外からの対応に苦労されているので、そのへんを手を組んで、上手くできないかと思っています。

そして、後継者の問題ですね。 今も少なくとも、毎月2、3件は、グローブ職人になりたいと言う問い合わせがくるんですが、みなさんなかなか新しく雇用できるところまでいかないので、例えば、鞄業界だと、鞄作りの職人養成学校みたいなのがあり、グローブ職人の養成学校なんかもあったらいいのかな?と思っています。

北野

なるほど、後継者の育成も大切ですよね。 それは、伝統的などの業界にも通じることで、我々の菓子業界も一緒なんですよね。

酒井さん、グローブ職人のこだわり、ありがとうございました。

本日は、とても貴重なお話をありがとうございました。 もう50年ぐらい前ですが、野球少年だった時に、父や祖父に新品のグローブを買ってもらって、新しい皮の匂いが新鮮で、翌日から使うのが楽しみで、枕の横に新しいグローブを置いて寝た時のことを思い出しました。

この記事を書いた人

豆菓子屋の3代目の社長

豆菓子屋の3代目にして、無類の野球好き、主に地元の京セラドーム大阪で、福岡ソフトバンクホークス戦を熱烈観戦